動植物や鉱物を組み合わせた漢方薬

漢方薬

漢方薬とは、

生薬(しょうやく)と呼ばれている、薬効がある動植物や鉱物を「いくつか組み合わせた薬」

のことを言います。

漢方薬

生薬を複数組み合わせる点は、漢方薬の特長と言えます。組み合わせる事による複合効果は、他の医学には見られない特徴と言えるでしょう。漢方薬は、原則として2種類以上の生薬が配合されている薬です。ほとんどの漢方薬においては、4種類以上の生薬が配合されています。

漢方の長い歴史の中で、どの生薬を組み合わせると効果があるか研究されてきました。数多くの漢方による治療経験により、安全で有効な生薬と配合だけが今に残っている、と言えます。

生薬は、自然の中に存在している物です。植物の葉や茎、実や根、花や樹皮などがよく利用されています。植物以外の物では、鉱石や動物の化石、貝殻なども利用されています。何らかの薬効成分を含んでいる物が、生薬として利用されています。

生薬を組み合わせた漢方薬は、体全体に作用する薬です。現代の医療で用いられる現代薬のように、病巣だけに的を絞って直接作用する物ではありません。漢方薬は、体の全体に穏やかに作用するので、アレルギー性疾患や老人性疾患という全身的な慢性疾患に有効とされています。

一方、多くの現代薬(西洋薬や化学薬)は、有効な成分だけを分離して、精製した物です。非常に効力があり、治療の目標とする病巣部位に直接作用します。

ちなみに漢方は、日本に伝わった後では日本独自の発展を遂げているようです。
また、漢方には、漢方薬による治療だけではなくて、鍼(ハリ)や灸(きゅう)なども含まれています。

体質を改善する薬

漢方医学では、例えばアレルギー症状に対して、その人の体質の問題であると考えています。同じ物質に対して、アレルギー反応を起こす人と起こさない人がいるからです。そして漢方薬は、体質を改善するためのものと考えられています。
西洋医学の場合では、アレルギー反応を抑えるための治療を行ないます。根本的な治療というよりも、対処療法と言えるでしょう。

もしも漢方薬を飲み続けることで体質を改善できたら、その後、アレルギー反応は起きないでしょう。しかし体質の改善は、かなりの時間がかかります。なので多くの人は、長い間、薬を飲み続けることができないようです。
症状が少し治まったら、漢方薬を飲まなくなります。そして再び、アレルギーに悩むことになってしまうようです。

未病の場合で飲む薬

未病とは、漢方の考え方の一つです。病気と健康の間の状態、病気の一歩手前の状態の事を言います。完全に健康であるとは言えない状態ですが、西洋医学による検査では結果に異常が認められない状態となります。
未病の自覚症状としては、頭痛や肩こり、耳鳴り、倦怠感、朝起きられない事などの症状があります。自覚症状がまだない生活習慣病も、未病と言えるでしょう。

このような体調の不調をそのままにしておくと、実際の病気になってしまう可能性があります。よって未病の段階で対処する事が、大事です。病気になるのを予防する事が大切です。西洋医学においても、予防医学がますます重視されるようになってきています。
漢方においては未病も治療の対象になり、漢方薬が処方されます。

副作用が少ない薬

漢方薬は、全般的に現代薬(西洋薬・化学薬)と比べて、作用が穏やかな薬と言えます。

副作用については、比較的少なくて軽いと言われています。

しかし、副作用がない訳ではありません。なので、素人の判断で用いてはいけません。

以下に副作用を起こしやすい漢方薬と、その副作用の症状を書きます。

  • 大黄:腹痛、下痢、食欲不振。
  • 麻黄:食欲不振、多汗、不眠、動悸。
    重症の心臓病の人の場合、「狭心症を起こす恐れ」があります。
  • 甘草:むくみ、血圧の上昇。
    この甘草は鎮痛、消炎効果があるので、多くの漢方薬に含まれています。
  • 附子:熱感、ほてり、発汗、しびれ。
  • 地黄:胃の「もたれ感」。

漢方薬は、個人の「証(しょう)」に合わせて用いることが原則です。
漢方薬が「その人の証」に適していない場合、かえって症状が悪化してしまう危険性があります。例えば、虚証の人に対して強力な下剤や発汗薬を用いることは、不適切と言えます。

瞑眩

その人の証に合っている漢方薬を用いているのに、不快な症状が出る場合があります。
これは瞑眩(めいけん)と呼ばれる症状です。副作用と症状が似ているので、区別がつきにくいことがあります。

瞑眩の場合、症状が出るのは薬を服用し始めた最初の2日間から3日間です。その後は症状が治まり、快方に向かいます。
これは、薬が体に作用している証拠となります。漢方医学では、むしろ好ましい反応と考えられています。

高齢者の体に優しいと言える漢方薬

患者の一人ひとりに合わせた治療を行なう方法の一つとして、漢方が再び注目されています。そして高齢者に対する治療においても、漢方が使われています。

高齢者の中には、いくつかの病気を併せ持っている方がいます。そのような高齢者の方は、西洋医療を行なっている病院では、内科や整形外科など、いくつかの科で診察を受ける事になります。
そのような場合、薬剤の数も多くなりがちです。高齢者の薬物の代謝能力は低下しているので、薬をたくさん服用する事は体に対する負担も大きい、と言えます。

一方、漢方薬については、生薬は自然界に存在する物から作られます。よって、高齢者の体に対して負担が少ないと言えます。薬剤の数も少なめになる事が多いようです。
しかしそうは言っても、医学の進歩に西洋医学は必須です。今後は「それぞれの医療」が補完し合い、高齢者の健康をサポートしてゆく事が期待されています。

昔から続いている日本の漢方

漢方の歴史について、簡単にお話したいと思います。
漢方のもとは中医学です。これは約2000年以上も前になる、中国の「漢の時代」に確立されました。

漢方は日本に伝わった後、日本独自の医療である漢方薬として発展しました。平安時代の後期から、日本独自の診断や処方が加えられてきました。ですが明治以降では、西洋の文化が伝来するにつれて、漢方は衰退してゆきました。西洋医学が、漢方に代わって主流となっていきました。
しかし、漢方が衰退してゆく中でも、漢方を支持する医師は存在し続けました。よって、完全に無くなる事はありませんでした。

漢方は、東洋医学の一つです。東洋医学とは、アジアの諸地域で発祥した医学の総称です。漢方を始め、中医学、イスラム医学、チベット医学なども含まれています。
日本においては、東洋医学と言えば漢方を指すことが多いです。ちなみに東洋医学には、鍼(ハリ)、灸、按摩(あんま)、マッサージなども含まれています。