原因を取り除く治療が求められる「うつ病」

うつ病の症状

DSM-IV-TR(精神疾患の分類と診断の手引き)によると、うつ病の主要症状として次の二つが挙げられています。

  • 抑うつ気分
  • 興味・喜びの喪失

抑うつ気分

「抑うつ気分」とは、気分が落ち込み、何をしても心が晴れないという「嫌な気分のこと」を言います。また、「空虚感」や「悲しみ」なども意味します。

「抑うつ気分」によく似ている症状としては、「自分には何の価値もないと感じる無価値感」や、「自殺念慮・希死念慮」があります。簡単に症状をまとめると、「気分が落ち込んで嫌な毎日である。自分には存在している価値はなく、死にたいと思う」という訴えである、と言えます。

興味・喜びの喪失

「興味・喜びの喪失」とは、発病する前までは楽しんでいた事を楽しめなくなってしまう、という感情が麻痺した状態を言います。

「興味・喜びの喪失」に似ている症状には、「気分の低下と易疲労性(いひろうせい)」や「集中力・思考力・決断力の低下」という状態があります。簡単に症状をまとめると、「何をしても面白くなくて、物事に取り掛かる気力がなくなった。何もしていないのに疲れてしまう。考えがまとまらず、小さな物事さえも決断できない」という訴えになります。

余談:血液検査

余談になりますが、確か2007年頃のニュースだったと思いますが、血液検査によって、うつ病や統合失調症などを判断できるようになった、と聞きました。
今まで本当に「うつ病」なのに信じてもらえなかった人にとっては、良いニュースだと思いました。なぜなら、血液検査という科学的な手段で「うつ病である」と判断してもらえるからです。

抗うつ薬

抗うつ薬とは、主に「うつ症状」を緩和することを目的として用いられる薬剤です。うつ病・うつ症状を始め、パニック障害や強迫性障害、摂食障害に対しても用いられます。不眠や慢性疼痛(とうつう)に対しても、用いられることがあります。

主な抗うつ薬には、以下の物があります(2008年当時)。

  • 選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)。
  • セロトニン – ノルエピネフリン(ノルアドレナリン)再取り込み阻害薬(SNRI)。
  • 三環系抗うつ薬。
  • 四環系抗うつ薬。
  • ドーパミン – ノルエピネフリン再取り込み阻害薬(DNRI)。これは、日本国内においては未承認です。
  • 塩酸ププロピオン(商品名:ウェルブトリン)。
  • モノアミン酸化酵素阻害薬(MAO阻害薬)。副作用により扱いにくいということで、現在では、ほとんど使われていません。

抗うつ薬を用いる際、躁状態の惹起(じゃっき:事を引き起こすこと)について、注意する必要があります。うつ状態の患者に抗うつ薬を投薬すると、躁状態になるという症状があります。これは疫学上の反証はありますが、経験的に知られています。

抗うつ薬の副作用

抗うつ薬を用いる場合、その副作用に注意する必要があります。
例えば、三環系抗うつ薬や四環系抗うつ薬という古い世代の薬の場合、抗コリン作用などがあります。この作用により、口の渇き、便秘、目のかすみ、排尿困難などの副作用が出たりします。
また、アドレナリンα受容体遮断の作用により、低血圧、めまいが起こります。
抗ヒスタミン作用により、眠気、体重増加が起こります。

古い世代の抗うつ薬である三環系抗うつ薬や四環系抗うつ薬と比べて、新しい世代の抗うつ薬であるSSRISNRIでは、副作用は軽減されてきています。排尿困難や眠気という副作用については、軽減されてきています。しかし、吐き気や性欲減退などの副作用が報告されています。

これらの副作用以外にも、抗うつ薬を用いる際に注意すべき事がいくつかあります。よって抗うつ薬の使用については、専門医の指導の下で行なってください。

副作用のためハッピーになれない?

ところで近年、抗うつ薬を「ハッピードラッグ」として服用する例が見られました。抗うつ薬を服用すると「気持ち」が明るくなるからという理由で、服用するようです。
もしかしたら、前向きに生きる姿勢を強調するという目的があるのかもしれません。ですが、抗うつ薬の作用は非常に複雑です。なので、深刻な副作用をもたらすこともあります。

抗うつ薬の一つに、アナフラニールという薬があります。この副作用として便秘、尿が出にくくなる、口が渇くという症状が出たりします。このような副作用が出た場合、結果としてハッピーな生活を送れないと思います。
安易な服用は、脳の機能に変調をもたらす危険もあります。必ず、専門医の判断に基づいた処方が必要です。

自殺の危険性

抗うつ薬を用いる際、自殺の危険性について注意する必要があります。
抗うつ薬、特にSSRIの処方を開始した直後に、未遂も含めて、自殺のリスクが高まるという報告があります。

なぜそうなるかについては、様々な説があります。
一つに、それまであまりにも重症で自殺の意欲すらなかった患者が、自殺を図ろうという意欲を持ってしまうという説があります。
他には、SSRIが受容体のダウンレギュレーションを行なうことから、処方を開始した直後に、一時的に「うつ病の症状が悪化する」という説もあります。

うつ病を改善できる薬物療法

薬物療法以前では「うつ病の治療法」として、その効果が証明されていた方法は電気けいれん療法でした。
一方で近年、薬物療法つまり抗うつ薬の投薬による療法について、その有効性が臨床的そして科学的に実証されてきています。抗うつ薬が効果を示す理由としては、それが神経伝達物質(セロトニン、ノルアドレナリン、ドーパミンなど)に作用するため、と言われています。

昔では、うつ病は「心の病(精神の病)」とされてきました。しかし近年の研究では「脳の疾患」である、とされています。脳内物質であるセロトニン、ノルアドレナリン、ドーパミンなどが脳内で不足している、とされています。
よって、これらの脳内物質の分泌を薬物療法により促進させる事で、うつ病の症状を改善できると考えられるようになってきました。

うつ病の成因論

うつ病になる人と言ったら、強いプレッシャーを受けつつ仕事をしている人や、神経をすり減らして仕事をしている人だと思います。業種では、例えばプログラマーやデザイナーなどに「うつ病」になる人が多い、と聞きました。これらの仕事は、どちらかと言うと神経を使う仕事です。なので、心が病んで行きやすいのかもしれません。※もちろん他の業種でも、神経をすり減らす仕事はたくさんあります。

それでは、人はどうして「うつ病」を発症するのでしょうか?
うつ病の成因論には、生物学的仮説と心理的仮説があります。しかし「どちらの仮説」も、それで「うつ病の発症」を全て説明できるものではありません。明確な結論は、得られていません(2008年当時)。

仮説には、次のようなものがあります。

  • 生物学的仮説。
  • 心理学的・精神病理学的仮説。
  • 認知療法の立場からの仮説。

生物学的仮説

うつ病の成因論の一つに、生物学的仮説があります。生物学的仮説としては、モノアミン仮説や、MRIなどの画像診断所見に基づく仮説などがあります。

モノアミン仮説とは、薬物の有効性から導かれたものです。モノアミン仮説の中では、特にセロトニン仮説がよく語られています。これは、近年のSSRIと呼ばれるセロトニンの代謝に関係した薬物の売上増加に伴うものです。
このSSRIという薬の特徴は、セロトニンという神経伝達物質にのみ作用する事です。それまでの抗うつ剤では、様々な神経伝達物質に作用していました。
なお、生物学的仮説については、まだ決定的な結論を得られていません(2008年当時)。

心理学的・精神病理学的仮説

うつ病の成因論について、心理学的・精神病理学的仮説があります。心理学的・精神病理学的仮説の中で有名なものは、テレンバッハのメランコリー親和型性格に関する仮説です。

メランコリー親和型性格とは、几帳面で生真面目、小心な性格を意味します。この性格を持つ人は、責任範囲が広がった時、何もかも「きちんと完璧にやらなくてはいけない」と思います。責任範囲が広がった時の例としては、職場での昇進などがあります。そして無理を重ねて、うつ病を発症します。以上のことが、この仮説となります。
ただし、この仮説だけで全ての「うつ病」を説明できる訳ではありません。

認知療法の立場からの仮説

うつ病の成因論について、認知療法の立場からの仮説があります。これは、その人の人生経験において否定的な思考パターンが固定化しており、それが「うつ病の発生」と関連があるのではないか、という仮説です。ただし、はっきりとした結論は出ていないようです(2008年当時)。
ちなみに認知療法は、SAD(Social Anxiety Disorder:社会不安障害・社交不安障害)の治療において行なわれています。SADは、人前に出ることに不安や恐怖を感じるという心の病です。単なる「性格的な人見知り」ではなくて、病気です。

ところで以前に認知療法については、「ものの見方を変える訓練」と聞いた事がありました。あがり症の克服にも有効と言われている訓練だそうです。自分の心や考え方を変えると、日常の問題を解決できる可能性があります。今の不安を感じる日常生活を変えたいと願っている方は、認知療法を試してみるのも一つの方法だと思います。

うつ病の原因を取り除く治療

以前の「うつ病の治療」は、近代の西洋医学を基に治療が行なわれていました。精神科や心療内科では、投薬中心の治療でした。
投薬中心の治療では、患者が訴える症状に対応して薬の種類が「どんどん増えていく傾向」がありました。患者に憂うつ症状があるなら抗うつ剤、不眠の症状があるなら睡眠薬、不安があるなら抗不安薬というように、薬の種類が増えていきました。
このような対処療法は、一時的に症状を緩和できます。しかし根本的な原因を取り除くことはできない、と言えます。例えば「うつ病の原因」として、偏った食事や不規則な生活習慣による「脳の栄養不足」があります。対処療法では、この原因を取り除けません。

うつ病の医療近年の代替治療では、なぜ「うつ病」になったか?という原因を見つけ出して、治療していきます。治すためには、病気の原因を取り除くことが必要だからです。そのためには、統合医療が行なわれることが大切です。代替医療と西洋医学を取り入れた統合医療が重要と考えられるようになりました。

ところで「うつ病」かどうか、自分自身ではわからないことが多いと思います。そのため、自分は病気なのか?怠けているだけなのか?どちらなのかわからずに苦しんでいる方も多いようです。
そんな場合は、専門医に相談してみましょう。心の病の専門機関と言えば精神科になります。ただし現在でも、精神科については誤解されている事が多いため、気軽に受診できない雰囲気になっています。そんな時は、心療内科に行っても良いと思います。

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