伝統的な影絵芝居と操り人形「ワヤン・クリット」

神秘的な影絵による物語、時間を忘れて鑑賞したい。

インドネシアのワヤン・クリットは、影絵芝居のこと、または操り人形のことを言います。

現地で影絵芝居を鑑賞したら、忘れられない体験になります。

操り人形「ワヤン・クリット」

影絵芝居
影絵芝居・イメージ画像

インドネシアのジャワ島やバリ島では、影絵芝居が盛んです。

この伝統的な影絵芝居と、それに用いられる操り人形を「ワヤン・クリット」と言います。

ワヤン(Wayang)は「影」、クリット(Kulit)は「皮」を意味します。

この芝居は、ヒンズー教寺院での「祭り」で行なわれます。「マハーバーラタ」や「ラーマーヤナ」というインドの古代叙事詩が、主な演目となります。

影絵の仕組み

「その影絵の仕組み」は、白いスクリーンを張って、その裏から石油ランプ(近年では電灯)を当てるという方法です。

スクリーンと石油ランプの間に「ワヤン・クリット」の人形を置いて、芝居を行ないます。

観客は、石油ランプや人形の反対側から鑑賞することになります。

なお、人形をスクリーンから遠ざけると、影は少しぼやけながら、大きく映し出されます。

人形には、中心に1本の太い棒が付いていて、下が「とがって」います。これによって、スクリーンの手前の座に人形を突き刺しておくことで、人形を出演したままの状態できます。

よって人形遣いは、複数の人形を操れます。ちなみに人形を操る人は「ダラン」と呼ばれます。

スクリーンの裏側は、あの世

人形には着色が施されています。観客からは当然、この着色は見えません。

スクリーンの裏側は、あの世であるとされています。

あの世では色の付いた美しい世界が、現世では白黒にしか見えない、という宗教的な意味が込められているそうです。

影絵芝居の人形
影絵芝居の人形・イメージ画像

ワヤン博物館(ジャカルタ)

ワヤン人形を専門に展示している博物館です。

影絵人形の「ワヤン・クリット」や「木人形のワヤン・ゴレック」など、木製や皮製の人形が展示室に並べられています。

指定の日には、ワヤン劇を見ることができるそうです。
もしもジャカルタ付近に海外旅行をする時は、人形の博物館にも訪れてみましょう。

インドの2大叙事詩

バリ島の伝統芸能「ワヤン・クリット」という影絵芝居では、以下のようなインド古代叙事詩の演目が演じられます。

  • マハーバーラタ
  • ラーマーヤナ

「マハーバーラタ」は「ラーマーヤナ」と並ぶ、インドの2大叙事詩の一つです。

マハーバーラタ

「マハーバーラタ」は古代インドの宗教的・哲学的・神話的な叙事詩です。

叙事詩というのは、「物事や出来事を記述する形の詩」、および「そのような形態の文学」のこと言います(小説を含むこともあります)。

一般的には民族の英雄や神話、民族の歴史として語り伝える価値のある事件を、物語として語り伝えます。

「マハーバーラタ」は、バーンダヴァ王家とカウラヴァ王家の間に起こった同族間の「戦い」を主題としています。

全18巻、原本はサンスクリット語で書かれました。

これに様々な伝承やヒンズー教の説話・詩などが加わって、物語に「奥行き」を出しています。

サンスクリット語は、古代・中世においてインド亜大陸で公用語として用いられていました。現在もインドの公用語の一つです。

しかし実際のところ、サンスクリット語は古典言語として存在しており、日常語としての話者はほとんど存在しません。

ラーマ王子の伝説をまとめたラーマーヤナ

「ラーマーヤナ」は、「ラーマ王行状記」の意味で、ヒンズー教の神話と古代英雄であるコーサラ国のラーマ王子に関する伝説を、まとめたものです。

活躍する人物は、すべてクシャトリアです。

クシャトリアとは、古代インドのバラモン教社会における四姓制度の第2位(※)に位置する王族・武家階級を意味します。

「ラーマーヤナ」でクシャトリアが活躍するというのは、当時のクシャトリア階級の台頭を反映しています。

※第1位は「バラモン」聖職者・僧侶階級、第3位は「ヴァイシャ」庶民、第4位は「シュードラ」隷民です。

「ラーマーヤナ」は、数多くの絵画・彫刻・建築・演劇・音楽などの題材になりました。インドおよび東南アジア一円に広く浸透しています。

天空の城ラピュタ

余談ですが、宮崎駿・監督の「天空の城ラピュタ」の「空中に浮かぶ島」などのモチーフは、「ラーマーヤナ」のイメージを反映していると言われています。

宮崎監督はインドとの合作で、企画段階で「ラーマーヤナ」に参加していたそうです。

参考:世界の叙事詩

ところで現存する世界の叙事詩としては、最古のものでは「ギルガメシュ叙事詩」があります。

西洋では「イリアス」「神曲」などがあります。
アジアでは、「マハーバーラタ」「ラーマーヤナ」などあります。

また、日本文学においては、古事記や日本書紀がこれに相当すると言えます。
平家物語などの軍記物も、琵琶法師が伝える叙事詩的な口承文芸です。